やわらかい物ばかり食べると、歯並びは悪くなる?
執筆:峰 啓介
- 矯正情報ブログ
「最近の子どもは、やわらかい物ばかり食べているから顎が小さくなって、歯並びが悪くなった」。
こんな話を聞いたことはないでしょうか。確かに、昔と比べると私たちの食生活はずいぶん変わりました。
では、子どもに硬い物をたくさん食べさせれば、顎が大きくなって歯並びが良くなるのでしょうか? 私は、そこまで単純な話ではないと思っています。
食べ物を変えれば、歯並びが変わるわけではありません
今、歯並びが少しガタガタしている子どもに、「硬い物をたくさん噛めば、顎が大きくなって歯並びが良くなりますよ」と、私は言いません。歯並びには、歯の大きさや顎の大きさ、上下の顎の位置関係、歯が生える方向など、さまざまな要因が関係しています。もちろん遺伝的な影響も大きくあります。
毎日の食事だけで歯並びが大きく変わるとは考えにくいのが実際のところです。硬い物を食べれば、すでに足りない歯のスペースが増えて、ガタガタだった歯が自然に並ぶ、というわけではありません。
長い目で見ると、食生活は顎の形に影響しているかもしれません
一方で、もっと長い時間軸で考えると話は少し変わります。人間の顎や顔の形は、食生活や生活環境の変化と無関係ではないと考えられています。例えば、歴史上の人物の肖像画を見ていると面白いことがあります。徳川家康の肖像画を見ると、かなりしっかりした顎をしているように見えます。一方、時代が下った13代将軍・徳川家定や14代将軍・徳川家茂の肖像を見ると、家康と比べて華奢な顎に見えます。
もちろん、肖像画だけで実際の骨格を正確に判断することはできません。ただ、食べ物が次第に加工され、やわらかくなっていったことが、人間の顎や顔の形態に長い時間をかけて影響してきた可能性はあります。それは、今日硬い物を食べたから明日顎が大きくなる、という話ではありません。生活環境が何世代にもわたって変化する中で、遺伝的な要素も含め、人間の体そのものが少しずつ変化してきたという話です。
顎が小さくなったことは、悪いことなのでしょうか?
では、顎が昔より華奢になったことは、人間にとって悪いことなのでしょうか。これも、一概には言えません。人類は長い進化の中で、顔面の骨格が相対的に小さくなり、一方で脳を収める頭蓋は大きくなってきました。人間の体は、生活環境に合わせて変化してきたとも考えられます。
現代では食べ物を調理し、やわらかくして食べることができます。そして、歯並びに問題があれば矯正歯科治療によって改善することもできます。ですから、「昔のような大きな顎に戻さなければいけない」とまで考える必要はないと思います。
それでも「しっかり噛む」ことは大切です
だからといって、やわらかい物だけを食べていれば良いという話でもありません。歯並びとは別に、噛むという機能そのものはとても大切です。噛むためには、歯だけではなく、顎を動かす筋肉や舌、頬など、さまざまな組織を使います。若いうちからきちんと噛む習慣を持ち、噛む機能を保っておくことは、年齢を重ねたときにも役に立ちます。
ですから私は、歯並びを良くするためというより、「しっかり噛める機能を育て、維持するため」に、普段からよく噛んで食べることを心がけてほしいと思っています。噛み合わせが悪いと体にどんな影響があるのかも、あわせて知っておいていただけると安心です。
顎が育つ時期と、噛む回数の関係
顎の骨は、噛むことによって筋肉や骨が刺激を受けながら成長していくと考えられています。顎は一般に生まれてから15歳ごろまで成長を続けます。生後6か月ごろから乳歯が生え始め、2歳半ごろまでに乳歯20本が生えそろい、6歳ごろから永久歯への生え変わりが始まります。12歳ごろまでには第二大臼歯が生えそろい、14歳ごろに永久歯列が完成するのが一般的な流れです。
また、現代の食事は少ない回数で飲み込める料理が増え、食事にかける時間も短くなっているといわれています。ただし、噛む回数が減ったことと歯並びの乱れの因果関係は、はっきり証明されているわけではありません。大切なのは、成長期に「噛む」機会を意識して持つことだと考えています。
やわらかい食事が影響するのは、歯並びだけではありません
やわらかい物ばかりを食べていると、噛む機能そのものが育ちにくくなる可能性があります。噛む回数が減ると満腹感を得るまでに時間がかかり、食べ過ぎにつながることもあります。
さらに、口まわりの筋肉を使う機会が減ると、口が開きやすくなり口呼吸が増えるケースもあります。口呼吸が続くと、口の中が乾燥して虫歯や歯周病のリスクが高まるだけでなく、舌の位置が下がり、上顎の成長に影響する場合もあるとされています。歯並びとあわせて、お子さまの口の使い方全体を見ていくことが大切です。
顎と噛む力を育てる食生活のポイント
顎を育てるためには、食べ物の硬さよりも「しっかり噛む回数」が重要です。急に硬い物を食べさせると、顎や歯を痛めてしまうこともありますので、お子さまの噛む力に合わせて、少しずつ慣らしていくことをおすすめします。
具体的には、さつまいも、れんこん、にんじん、ごぼう、きのこ類、りんごなど、食物繊維を含み噛みごたえのある食材を日々の食事に取り入れるのがおすすめです。食材を少し大きめに切る、生で食べられる野菜は歯ごたえが残る程度に調理する、ハンバーグやチャーハンに根菜を混ぜるなど、調理の工夫でも噛む回数は自然と増やせます。
食事中の習慣も大切です。水やお茶で流し込まず、口の中の物を飲み込んでから飲み物を飲むようにしましょう。また、猫背ややもたれかかった姿勢では、唇や舌、顎がうまく働きません。足がぶらぶらしないよう、椅子の高さを調整したり踏み台を置いたりして、正しい姿勢で食べられる環境を整えてあげてください。ピリピリした雰囲気ではなく、楽しく食べられる食卓であることも、よく噛んで味わううえで大切です。
歯並びに影響する生活習慣(指しゃぶり・口呼吸・舌の癖)
食事以外にも、歯並びに影響することがある習慣があります。指しゃぶりは、一般に4〜5歳ごろまでに自然にやめられれば、歯並びが元の位置に戻ろうとする力が働くため、大きな問題にならないことが多いとされています。5歳を過ぎても続く場合は、歯並びや噛み合わせへの影響が出やすくなるため、一度ご相談いただくのがおすすめです。
また、口を閉じているときに舌先が歯の裏に当たっている「舌癖」や、飲み込むときに舌が前に出る「逆嚥下」も、歯を前に押し出す力となって歯並びに影響することがあります。口呼吸とあわせて、気になる様子があれば早めに歯科医師にご相談ください。
歯並びが気になったら、矯正相談という選択肢があります

歯並びが気になるとき、食事や生活習慣を見直すことは大切ですが、それだけで歯並びそのものを整えることは難しいのが現実です。歯並びのガタガタは、顎の大きさと歯の大きさのバランス、歯の生える方向などによって決まるため、整えるには矯正歯科治療が必要になる場合があります。
三重県伊賀市の歯医者、峰歯科・矯正歯科クリニックでは、矯正歯科治療から経過観察まで院内で一貫して対応しています。矯正歯科の専門的な診断をもとに、今すぐ治療が必要なのか、様子を見てよいのかを丁寧にご説明しますので、「うちの子の歯並びは大丈夫かな」という段階でも、お気軽にご相談ください。
また、歯並びの相談を考えるきっかけとして、頬杖や片側だけで噛むクセなど、毎日の習慣が気になる方も少なくありません。習慣と歯並びの関係についても、診察の際にあわせてお話しできます。
お子さまの矯正はいつから?成長期だからこそ考えたいこと
「矯正はいつから始めればいいの?」というご質問もよくいただきます。お子さまの場合、乳歯から永久歯への生え変わりの時期は、顎の成長も進む大切な時期です。この時期に歯並びや噛み合わせを確認しておくと、今すぐ治療を始めるべきか、成長や歯の生え変わりを待ってよいかを判断しやすくなります。乳歯を抜くタイミングに悩んだときも、一度歯科医師に確認しておくと安心です。
もちろん、大人になってからでも矯正歯科治療は可能です。大人の歯列矯正は何歳からでも遅くないことも多いのですが、成長期ならではの選択肢があるのも事実です。まずは現在の歯並びと噛み合わせを確認し、その子に合ったタイミングを一緒に考えていきましょう。峰歯科・矯正歯科クリニックの矯正歯科のページでも、治療の流れをご案内しています。
小児矯正の「Ⅰ期治療」と「Ⅱ期治療」とは
お子さまの矯正歯科治療は、大きく「Ⅰ期治療」と「Ⅱ期治療」の2段階に分けて考えます。Ⅰ期治療は、乳歯と永久歯が混在している時期に、顎の成長を利用して上下の顎のバランスを整えたり、歯が並ぶスペースを確保したりすることを目的とした治療です。口呼吸や舌の癖といった習慣の改善に取り組む場合もあります。歯並びの状態によっては、Ⅰ期治療だけで経過を見られることもあります。
Ⅱ期治療は、永久歯が生えそろった後に、歯を一本一本動かして歯並びや噛み合わせを整える治療です。成長期にⅠ期治療でスペースを確保しておくことで、将来、永久歯を抜かずに治療できる可能性が高まる場合もありますが、お口の状態によって異なりますので、診断のうえでご説明します。
矯正相談から治療・保定までの流れ
矯正歯科治療は、まず矯正相談から始まります。お悩みやご希望を伺い、必要に応じて検査(お口や顎の状態を把握するための資料取り)を行ったうえで、診断結果と治療方針をご説明し、ご納得いただいてから治療を開始します。治療後は、きれいになった歯並びを維持するための保定(リテーナー)とメンテナンスが必要です。歯並びは加齢によっても少しずつ変化するため、治療後のケアも大切になります。
峰歯科・矯正歯科クリニックは一般歯科も行っていますので、矯正歯科治療を始める前に虫歯や歯周病がないかを確認し、必要があればその治療から進めることも可能です。矯正歯科治療から日々のメンテナンスまで、院内で一貫してご相談いただけます。
よくある質問
Q. 硬い物をたくさん食べさせれば、歯並びは良くなりますか?
A. 食事だけで歯並びが大きく変わるとは考えにくいです。歯並びには歯や顎の大きさ、遺伝など多くの要因が関わります。ただし、しっかり噛む習慣は噛む機能を育てるうえで大切ですので、無理のない範囲で続けてください。
Q. 歯並びが気になりますが、矯正を始めるのは早すぎませんか?
A. 治療を始めるかどうかとは別に、現在の状態を確認するだけでも意味があります。今すぐ治療が必要なのか、成長や生え変わりを待ってよいのかを診断してお伝えします。
Q. 抜歯をしないと矯正できないのでしょうか?
A. 一律には決まらず、歯並びの状態や希望する仕上がりによって異なります。
詳しくは矯正で「歯を抜きたくない」は正しいのか?をご覧ください。
Q. 指しゃぶりは何歳までにやめさせればよいですか?
A. 一般には4〜5歳ごろまでに自然にやめられれば、歯並びへの影響は小さいとされています。無理にやめさせようとせず、5歳を過ぎても続く場合や、歯並びが気になる場合は、歯科医師にご相談ください。
Q. 家庭でよく噛む習慣をつけるには、どうしたらよいですか?
A. 食材を少し大きめに切る、根菜や噛みごたえのある野菜を取り入れる、水で流し込まないといった工夫が効果的です。食事の姿勢を整え、楽しい雰囲気で食べることも心がけてみてください。
「硬い物を食べれば歯並びが治る」とは限りません
やわらかい物ばかり食べているから歯並びが悪くなった、反対に、硬い物をたくさん食べれば顎が大きくなって歯並びが良くなる。そこまで単純には考えられません。歯並びには遺伝的な要素も含め、さまざまな原因が関係しています。ただ、人間の食生活の変化が、長い時間をかけて顎や顔の形態に影響してきた可能性はあります。そして歯並びとは別に、しっかり噛むこと自体には意味があります。
歯並びが気になるのであれば、無理に硬い物を食べさせて治そうとするのではなく、一度現在の歯並びや噛み合わせを確認してもらうと良いでしょう。今すぐ矯正歯科治療が必要なのか、まだ成長や歯の生え変わりを待って良いのか。その子の状態を見て判断することが大切です。
矯正のご相談について
硬い物をたくさん食べても、食事だけで歯並びが大きく変わるわけではありません。歯並びには、歯や顎の大きさ、遺伝など多くの要因が関わっています。一方で、しっかり噛む習慣は噛む機能を育てるために大切ですので、硬さよりも噛む回数を意識し、無理のない範囲で続けていきましょう。指しゃぶりや口呼吸、舌の癖などの習慣にも注意が必要です。
歯並びが気になるときは、今すぐ矯正歯科治療が必要なのか、成長や生え変わりを待ってよいのかを知るだけでも意味があります。お子さまから大人の方まで、まずはお気軽に矯正相談をご利用ください。