子どもの歯並びが気になる…矯正はいつから始めるのがいい?
執筆:峰 啓介
- 矯正情報ブログ
お子さんの歯並びが気になっている保護者の方から、よくこんな質問をいただきます。
「矯正歯科治療は、早く始めた方がいいのでしょうか?」「小さいうちに始めれば、早く終わりますか?」「早く始めれば、歯を抜かずに済みますか?」。確かに、何事も早く始めた方が良いように思いますよね。
しかし、矯正歯科治療については、必ずしもそうではありません。私は、矯正歯科治療は早く始めることよりも、適切な時期に始めることが大切だと考えています。
早く始めても、早く終わるわけではありません
まず知っておいていただきたいのは、子どもの矯正歯科治療の終了時期についてです。矯正歯科治療では、基本的に永久歯が生え揃った状態で、歯並びや噛み合わせを整える必要があります。つまり、まだ永久歯が生え揃っていない段階で、すべての矯正歯科治療が終了するわけではありません。
例えば、小学1年生から矯正歯科治療を始めたとしても、永久歯が生え揃うのは一般的に小学6年生頃です。そのため、早く始めたからといって、早く治療が終わるとは限りません。むしろ、必要以上に早く始めることで、治療期間が長くなってしまうこともあります。
矯正歯科治療には、本人の協力が必要です
もう一つ重要なのが、お子さん本人の協力です。矯正歯科治療は、歯科医師が頑張ればそれだけでうまくいくものではありません。装置をきちんと使うこと。歯磨きをしっかりすること。定期的に通院すること。こうした本人の協力が、治療結果に大きく関係します。
まだ小さいお子さんの場合、なぜ矯正歯科治療が必要なのか、十分に理解できないこともあります。本人が嫌がっているのに、保護者の希望だけで無理に治療を始めても、なかなかうまくいかないことがあります。ですから私は、ある程度、本人が治療の意味を理解し、協力できる年齢になってから始める方が良いと考えています。その目安として、少なくとも小学2年生以降が良いと思っています。
多くの場合、小学5年生頃がちょうど良い時期です
では、実際には何歳くらいから始めるのが良いのでしょうか?私は、多くのケースで小学5年生頃からの治療開始が適していると考えています。理由は、永久歯への生え変わりがかなり進んでいるからです。
永久歯があと1年くらいで生え揃いそうな時期であれば、これから生えてくる歯の状態もある程度予測できます。また、お子さん自身も成長しており、矯正歯科治療に対する理解や協力も得られやすくなっています。
もちろん、歯の生え変わりには個人差があります。小学5年生でもまだ乳歯が多く残っている子もいれば、すでに永久歯がかなり生え揃っている子もいます。そのため、学年だけで判断するのではなく、永久歯への生え変わりの状態を見て、治療開始時期を決めることが重要です。前歯が少しガタガタしているときの治療のタイミングについても、別の記事でお話ししています。
当院の症例:成長期だからこそ、歯を抜かずに治療できた例

当院の症例に、上の前歯が前に出ている、いわゆる出っ歯の10歳の女子の症例があります。歯のでこぼこはそれほど大きくありません。成人になってから出っ歯を治療する場合は、上の歯を後ろへ下げるスペースが必要になるため、状態によっては上顎の歯を抜く治療が基本となります。
一方、成長期の子どもでは、成長や歯の生え変わりを利用できるため、同じような出っ歯でも歯を抜かずに治療できるケースがあります。この症例も、歯を一本も抜かずに治療を行いました。
出っ歯の原因は、大きく「上の歯が前に出ている」「下顎が後ろに引っ込んでいる」「その両方」の3種類があり、どのタイプかによって治療の考え方も変わります。この症例の主な原因は「上の歯が前に出ている」ことで、上の歯を全体的に後方へ移動させて前歯の突出を改善しました。
前歯だけを見ると大きな変化ではないように感じるかもしれませんが、横顔を見ると口元の突出感も改善しています。「出っ歯だからこの装置」というように見た目だけで治療方法を決めるのではなく、現在の年齢や成長の状態、永久歯が生えてくるスペースなども含めて治療方針を考えます。すべての出っ歯が非抜歯で治療できるわけではありません。
この症例の治療内容は、上の歯を後ろに下げることにより出っ歯を解消するもので、永久歯が揃ったらブラケット装置にて矯正します。費用はおおよそ70万から100万円くらいです。
主なリスクとして、上の歯を奥に動かすのが難しいことがあること、治療期間が長引くことがあること、歯根が短くなることがあること、歯肉が退縮することがあります。また副作用として、矯正歯科治療中に歯磨きを怠ると通常より虫歯になりやすくなり、保定装置を怠ると後戻りします。症例の詳細は出っ歯の症例 10歳女性のページをご覧ください。
ただし、早く治療した方が良い歯並びもあります
ここまで、早く始める必要はないと説明してきましたが、例外もあります。例えば、受け口や開咬など、顎の成長や噛み合わせに問題がある場合です。こうしたケースでは、成長期の早い段階で治療を始めた方が良いことがあります。受け口については、受け口という悩みに向き合った記事もご覧ください。
また、噛んだときに下顎が左右にずれてしまうような場合も、早めの対応が必要になることがあります。つまり、すべてのお子さんが小学5年生まで待てば良いわけではありません。早く治療すべき歯並びと、待った方が良い歯並びがあるということです。
当院の症例:受け口で、小学2年生から治療を始めた例

当院の症例に、受け口の8歳の男の子の症例があります。受け口とは、下の前歯が上の前歯よりも前にある状態です。症例ページの担当医のコメントでは、当院の小児矯正の推奨開始時期は平均的に小学5年生前後だが、受け口という歯並びについては小学2年生を推奨していると書かれています。
受け口の子どもは、口を閉じていると受け口だということがほとんど分かりません。歯が見えないからです。しかし大人の受け口は、口を閉じていても何となく分かります。骨格的に下顎が大きくなる、いわゆる「しゃくれている」状態になっているためです。
子どもの場合は、受け口でも骨格的には下顎がそれほど大きいということはありませんが、受け口のまま成長すると、骨格的にも受け口らしい骨格になっていきます。そのため、骨格的に下顎が大きくなる前に改善しておきたい歯並びなのです。
最近では、寝るときだけ使用するマウスピースで、平均的に1ヶ月以内くらいで受け口が改善する装置もあり、この症例でも小学2年生で約1ヶ月ほどで受け口を治しています。そして永久歯が揃ってから本格的な矯正歯科治療を再開し、でこぼこの治療を行って終了しました。これが典型的な小児の受け口の治療だと、担当医は述べています。ただし、受け口の程度や状態によって治療の内容や期間は異なります。
この症例の治療内容は、ブラケット装置にて治療したものです。費用はおおよそ80万から100万円くらいです。主なリスクとして、受け口の治療は難しいことがあり、大幅に治療期間が長引くことがあること、歯根が短くなることがあること、歯肉が退縮することがあります。また副作用として、矯正歯科治療中に歯磨きを怠ると通常より虫歯になりやすくなり、保定装置を怠ると後戻りします。症例の詳細は受け口の症例 男性8歳のページをご覧ください。
相談は小学2年生頃がおすすめです
そこで私がおすすめしているのが、小学2年生頃に一度、矯正相談を受けていただくことです。
この時期に歯並びや顎の状態を確認しておけば、早めに治療を始めた方が良いのか、もう少し成長を待った方が良いのか、永久歯が生え揃う時期まで経過を見て良いのか、といった判断ができます。
そして、すぐに治療が必要なければ、適切な時期まで待てば良いのです。相談したからといって、必ず矯正歯科治療を始めなければならないわけではありません。学校の歯科健診で歯並びを指摘された場合の考え方は、学校歯科健診の「歯並び・咬合 要検査」の記事も参考にしてください。
大切なのは、早く始めることではなく、適切な時期を見極めること
子どもの矯正歯科治療では、早く始めれば良い結果になるとは限りません。早く始めても、永久歯が生え揃う時期が早くなるわけではありませんし、本人の協力が得られなければ治療が難しくなることもあります。
私の基本的な考え方は、矯正相談は小学2年生頃から。実際の治療開始は、多くの場合、小学5年生頃から。ただし、受け口など早期治療が望ましいケースでは、それより早く対応することもあります。大切なのは、その子の成長や歯の生え変わりに合わせて、最適な時期を見極めることです。
お子さんの歯並びが気になる方は、早く治療を始めなければと焦る必要はありません。まずは現在の歯並びを確認し、いつ頃から治療を始めるのが良いのか、一緒に考えていきましょう。
伊賀市の歯医者、峰歯科・矯正歯科クリニックでは、お子さんの成長に合わせたご相談をお受けしています。気になる方は、お気軽にご相談ください。