矯正が終わったあとに歯並びが戻る理由と、リテーナーを続ける意味
執筆:峰 啓介
- 矯正情報ブログ
矯正歯科治療が終わって、きれいな歯並びになった。ところが、何年か経つと、また歯並びがガタガタしてきた。「せっかく矯正したのに、どうして元に戻ってしまうの?」こんな疑問を持たれる方もいると思います。
実は、矯正歯科治療が終わったあとも、歯は動く可能性があります。そして、これには大きく分けて2つの理由があります。
矯正直後は、歯の周りの骨がまだ安定していません
矯正歯科治療では、歯に力を加えることで歯を動かします。歯が動くときには、歯の周囲にある骨が吸収されたり、新しく作られたりしています。つまり、歯だけが骨の中を移動しているのではなく、周囲の骨も変化しているのです。
ところが、歯が目的の位置まで動いたからといって、その瞬間に周囲の組織が完全に安定するわけではありません。特に矯正歯科治療が終わった直後は、歯を元の位置へ戻そうとする力も働きやすい状態です。そのため、装置を外して何もしなければ、歯が動いてしまう可能性があります。
だからリテーナーが必要です
矯正歯科治療が終わったあとに使用するのが、「リテーナー」という保定装置です。リテーナーは、きれいに並べた歯が動かないように保持するための装置です。伊賀市の歯医者、峰歯科・矯正歯科クリニックでは、矯正歯科治療が終わった直後は、基本的に食事や歯磨きの時間を除いて、一日中リテーナーを使用していただきます。
これは非常に重要です。この時期にしっかり保定することで、歯の周囲の骨や組織が新しい位置に適応し、歯並びが安定しやすくなります。せっかく長い時間をかけて歯を動かしたのですから、この時期のリテーナーは必ず使用していただきたいと思っています。
1年ほど経過すると、夜だけの使用にできることもあります
矯正歯科治療が終了してから1年ほど経過し、歯並びが安定していれば、リテーナーの使用時間を減らせる可能性が高くなります。例えば、それまで一日中使用していたものを、寝るときだけの使用に変更するということです。ただし、すべての方が必ず1年で夜だけにできるわけではありません。歯並びの状態や治療内容、安定性を確認しながら判断する必要があります。
では、さらに何年か経過すれば、リテーナーを完全にやめても良いのでしょうか?ここからが、もう一つの重要な話です。
実は、歯は一生動き続けます
これは矯正歯科治療を受けた方だけの話ではありません。矯正歯科治療をしたことがない方でも、歯は年齢とともに少しずつ動いています。歯は骨に完全に固定されているわけではなく、周囲の組織を介して支えられています。
噛む力や周囲の組織の変化、加齢など、さまざまな影響を受けて歯の位置は変化していきます。そもそも矯正歯科治療は、この歯が動くという性質を利用した治療です。ですから、矯正歯科治療が終わったからといって、その後一生、歯が同じ位置にとどまるわけではないのです。
リテーナーをやめたら、元の歯並びに戻るの?
では、何年もリテーナーを使用したあと、完全にやめてしまったらどうなるのでしょうか?
私は、程度の差はあっても、歯の位置は少しずつ変化していくと考えています。
ただし、ここで知っておいていただきたいのは、必ずしも矯正歯科治療前の歯並びに戻るわけではないということです。矯正歯科治療で整えた上下の噛み合わせが、長い時間をかけて安定している場合、多少歯が動いたからといって、噛み合わせ全体が大きく崩れるとは限りません。
一方で、前歯に少しずつでこぼこが生じることはあります。特に下の前歯などは、年齢とともに歯並びが変化しやすい部分です。つまり、リテーナーをやめたからといって、必ず矯正歯科治療がすべて無駄になるわけではありません。
歯並びが少し戻ったら、また矯正しなければいけないの?
これも、必ずしもそうではありません。多少でこぼこが出てきたとしても、本人が気にならず、噛み合わせにも問題がなければ、そのまま経過を見るという選択肢もあります。反対に、せっかくきれいにした歯並びが変わってしまい、見た目が気になるのであれば、再治療を検討しても良いと思います。
その場合も、歯並びの状態によっては、比較的小さな範囲の治療で改善できることがあります。大切なのは、歯が少し動いたからといって、必ず最初から矯正歯科治療をやり直さなければならないわけではない、ということです。治療を途中でやめてしまった方の再開については、「途中でやめた治療、今さらだけどやり直したい」の記事もご覧ください。
当院の症例から:後戻りも考えて、治療方針を決めた例

当院の症例に、子どもの頃から矯正歯科治療を始めた10歳の男の子の症例があります。最初の状態でこぼこが大きかったため、歯列が広がるような装置を、寝るときだけ使用してもらいました。歯列の幅はしっかり広がったものの、それでもまだ隙間が足りません。
足りない分は、さらにワイヤー装置で拡大するか、歯の数を減らすかで隙間を作る必要があります。
この症例の場合、今後の後戻り、審美的な面を考慮して、歯を抜いて並べることにしたと書かれています。仕上がりはとてもきれいで、歯も磨きやすく、健康な歯を保存しやすくなったと思う、と述べています。
このように、矯正歯科治療では、治療後に歯並びが戻りにくいかという視点も含めて治療方針を決めます。矯正で「歯を抜きたくない」は正しいのか?でも、抜歯の判断についてお話ししています。
この症例の治療内容は、まず寝るときだけ、1年くらい顎を広げる装置を付けてもらい、永久歯が揃ったらブラケット装置で矯正するもので、上下左右1本ずつ歯を抜きます。費用はおおよそ70万から100万円くらいです。
主なリスクとして、治療期間が長引くことがあること、歯根が短くなることがあること、歯肉が退縮することがあります。また副作用として、矯正歯科治療中に歯磨きを怠ると通常より虫歯になりやすくなり、保定装置を怠ると後戻りします。症例の詳細はでこぼこの症例 男性10歳のページをご覧ください。
私は、寝るときだけでもリテーナーを使い続けることをおすすめします
矯正歯科治療が終わって何年も経過すれば、歯の周囲の組織はある程度安定します。しかし、歯が一生動くという性質そのものがなくなるわけではありません。そのため、私は寝るときだけでも、リテーナーを長く使い続けることが無難だと考えています。
毎日使い続けることが負担に感じられる方もいると思います。ただ、長い時間と費用をかけて整えた歯並びです。できるだけその状態を維持したいのであれば、夜間のリテーナーは非常に有効な方法です。もちろん、リテーナーを使っていても歯並びの変化を完全に防げるとは限りませんが、使用を続けることで変化を抑えることが期待できます。
矯正歯科治療が終わっても、歯並びとの付き合いは続きます
矯正歯科治療が終わった直後は、歯の周囲の組織がまだ安定していないため、しっかりとした保定が必要です。そして、ある程度安定したあとも、歯は年齢とともに少しずつ動いていきます。これは矯正歯科治療を受けた方だけでなく、誰にでも起こり得ることです。ですから、私は矯正歯科治療が終わった方には、寝るときだけでもリテーナーを使い続けることをおすすめしています。
もしリテーナーを使わなくなって歯並びが変わってしまっても、必ずしも大がかりな再治療が必要とは限りません。その変化が気になるかどうかも含めて、相談していただければと思います。
矯正歯科治療で歯をきれいに並べることと、その歯並びを長く維持すること。どちらも大切です。矯正歯科治療後の歯並びやリテーナーについて気になることがあれば、お気軽にご相談ください。