歯並びがきれいでも、噛み合わせが悪いことはあるの?
執筆:峰 啓介
- 矯正情報ブログ
「歯並びがきれいなら、噛み合わせも良いのでしょうか?」実は、そうとは限りません。
歯並びがきれいでも、噛み合わせが悪いことはあります。さらに、歯並びも噛み合わせも良いのに、口元に問題があることもあります。少し不思議に思われるかもしれませんが、今回はその違いについて説明したいと思います。
歯並びと噛み合わせは、別のものです
まず、歯並びについて考えてみましょう。上の歯には上の歯並びがあり、下の歯には下の歯並びがあります。
それぞれの歯がでこぼこせず、きれいに一列に並んでいれば、一般的には「歯並びが良い」と認識されると思います。では、噛み合わせはどうでしょうか?
噛み合わせとは、上の歯並びと下の歯並びが、どのように組み合わさっているかということです。
つまり、上の歯がきれいに並んでいて、下の歯もきれいに並んでいたとしても、それらが噛んだときに理想的な位置関係になっているとは限らないのです。
噛み合わせが体に与える影響については、噛み合わせが悪いと、体にどんな影響がある?でも解説しています。
歯並びがきれいでも、出っ歯や受け口になることがあります
例えば、上の歯も下の歯もでこぼこなく並んでいるとします。しかし、上の歯が下の歯よりも大きく前に出ていれば、出っ歯になります。反対に、下の歯が上の歯よりも前に出ていれば、受け口になります。
このような場合、上下それぞれの歯並びはきれいでも、上下の歯の位置関係に問題があるわけです。
矯正歯科治療では、単に歯をきれいに一列に並べるだけではなく、上下の歯がどのように噛み合うかまで考える必要があります。
歯並びも噛み合わせも良いのに、口元が出ていることもあります
さらに、もう一つ知っていただきたいことがあります。
上の歯も下の歯もきれいに並んでいる。上下の噛み合わせにも大きな問題がない。それでも、口元が前に出ていることがあります。これは「上下顎前突」と呼ばれる状態で、上下の前歯がともに前方に位置しており、歯列全体が顔に対して前に出ているような状態です。
最近では「口ゴボ」と表現されることもあります。「口ゴボ」については、「口ゴボ」って何?原因と治し方の記事もご覧ください。
この場合、歯のでこぼこを治す必要はありません。噛み合わせにも大きな問題がないことがあります。
それでも、顔全体とのバランスで考えると、歯の位置を改善した方が良い場合があるのです。
口元が出ていると、口が閉じにくくなることがあります
上下顎前突で問題になるのは、見た目だけではありません。前歯が前方に位置していることで、自然に唇を閉じることが難しい場合があります。口を閉じようとすると、唇や顎の周囲の筋肉に力が入ってしまうこともあります。
このような場合、矯正歯科治療によって前歯を後ろに下げることで、唇を閉じやすくなることがあります。そして、口が自然に閉じられるようになることには、健康面でのメリットも考えられます。
当院の症例から:口元が出ていた方が、口を閉じやすくなった例

当院の症例に、口元が出ている16歳の女の子の症例があります。
この症例は、他院での矯正歯科治療を当院で引き継いだものです。他院で1年ほど治療を受けていたものの、動いているような気がしないということで転院されました。
当初の歯科医院がどのような治療をしていたか、それが妥当かどうかは判断しかねるが、この状況から引き継ぐのは全く問題なく、治療を引き受けました。
その後、予想通り歯はみるみる動き、患者さんも歯の動きをすぐに実感できたようです。
顔写真の変化が素晴らしく、この変化は単純に見た目が変化しただけでなく、口が閉じやすくなったことによるものです。治療前の口元が不自然に見えたのは、口を閉じるのに苦労していたからで、それが簡単に閉じられるようになったからこそ、見た目に大きな変化が出たということです。
この症例の治療内容は、上下左右1本ずつ歯を抜いて隙間を作る症例ですが、前の歯科医院で抜歯済みでした。
ブラケット装置で矯正しています。費用はおおよそ80万から100万円くらいです。主なリスクとして、治療期間が長引くことがあること、歯根が短くなることがあること、歯肉が退縮することがあります。
また副作用として、矯正歯科治療中に歯磨きを怠ると通常より虫歯になりやすくなり、保定装置を怠ると後戻りします。症例の詳細は口元が出ている症例 女性16歳のページをご覧ください。
口が閉じやすくなると、虫歯や歯周病の予防にもつながります
口が開いている時間が長いと、口の中が乾燥しやすくなります。実は、唾液には非常に重要な働きがあります。食べかすや細菌を洗い流したり、酸を中和したり、口の中の細菌の増殖を抑えたりする働きです。
つまり、唾液は口の中を守る大切な存在なのです。口が閉じにくい状態が改善され、口腔内の乾燥が軽減されれば、こうした唾液の防御機能が働きやすい環境を保つことにつながります。結果として、虫歯や歯周病のリスクを減らすうえでもプラスになる可能性があります。
もちろん、虫歯や歯周病にはさまざまな原因があるため、矯正歯科治療だけで予防できるわけではありません。ただ、口元の改善には、見た目以外にも意味があるのです。
そして何より、見た目の印象が大きく変わります
上下顎前突の矯正歯科治療では、前歯の位置を改善することで、口元や横顔の印象が大きく変わることがあります。唇が自然に閉じやすくなり、口元がすっきりする。横顔のバランスが整う。こうした変化は、患者さんにとって非常に大きなメリットだと思います。
私は、見た目を良くしたいという理由も、矯正歯科治療を受ける十分に正当な理由だと考えています。
歯並びがきれいだから、矯正歯科治療をする必要がないとは限りません。抜歯の判断については、矯正で「歯を抜きたくない」は正しいのか?でお話ししています。
矯正歯科治療では、歯並び・噛み合わせ・口元を総合的に考えます
今回の話をまとめると、矯正歯科治療では大きく3つのことを考える必要があります。
- 歯並びは、上下それぞれの歯がきれいに並んでいるか
- 噛み合わせは、上下の歯が適切な位置関係で噛み合っているか
- 口元は、歯の位置が顔全体のバランスに合っているか。
これらは関係していますが、同じものではありません。歯並びだけを治せば良い場合もあれば、噛み合わせや口元まで改善する必要がある場合もあります。そのため、伊賀市の歯医者、峰歯科・矯正歯科クリニックでは、歯のでこぼこだけを見るのではなく、上下の顎や歯の位置関係、口元の状態まで確認したうえで治療方針を考えています。
大切なのは、単に歯をきれいに並べることではなく、どこをどのように改善するのかを正しく診断することです。
「歯並びは悪くないけれど、口元が気になる」「歯はきれいに並んでいるのに、出っ歯に見える」。そんなお悩みも、矯正歯科治療で改善できる可能性があります。気になる方は、お気軽にご相談ください。