前歯だけ気になるのに、どうして奥歯まで矯正するの?
執筆:峰 啓介
- 矯正情報ブログ
矯正相談で、こんな希望を聞くことがあります。
「上の前歯だけガタガタしているので、そこだけ治したい」
「下の歯並びは気にならないので、上だけ矯正できませんか?」。
確かに、気になっているのが前歯だけなら、そこだけ治せば良いように思いますよね。
しかし、実際の矯正歯科治療では、前歯だけが気になっていても奥歯まで動かしたり、上の歯だけが気になっていても上下両方を治療したりすることがよくあります。なぜでしょうか?
歯並びが悪くなる原因は、前歯だけにあるわけではありません
歯並びの悪さには、上下の顎の骨格や大きさ、位置関係が深く関係しています。例えば、顎の大きさに対して歯が大きければ、歯が並ぶスペースが不足して、前歯がガタガタになります。また、上下の顎の位置関係によって、出っ歯や受け口になることもあります。
つまり、目に見えている前歯の凸凹は、結果として現れているものであって、原因が前歯そのものにあるとは限らないのです。前歯だけをきれいに並べても、根本的な問題が解決するとは限りません。
子どもと大人では、治療の考え方が違います
子どもの場合は、まだ顎が成長している途中です。そのため、症例によっては顎の成長を利用したり、成長の方向をコントロールしたりする治療が可能です。一方、大人の場合は、基本的に顎の成長が終了しています。
矯正装置だけで顎の骨格そのものを大きく変えることはできません。そのため、現在の骨格の中で歯をどのように動かすかを考える必要があります。大人の歯列矯正でも、この考え方が基本になります。
前歯の位置を改善するために、奥歯を動かすこともあります。上下の噛み合わせを整えるために、気になっていなかった反対側の歯列も動かすことがあります。
当院の症例から:前歯のでこぼこの原因が、奥歯の関係にあった例

当院の症例に、上下の前歯のでこぼこを治療した11歳の男性の症例があります。前歯だけを見ると分かりにくいのですが、実は奥歯の関係が出っ歯の状態でした。この状態のままでこぼこを改善しようとすると、前歯が出っ歯になってしまいます。
そこで、ワイヤー装置を装着する前に、寝るときだけ使用する、下顎が前方に成長するような装置を使っていただきました。そのおかげで奥歯の出っ歯の関係を簡単に治すことができ、後のワイヤー装置による治療をスムーズに行うことができました。
もし大人になってから始めていたら非常に難しい症例になったと予想されます。症例の詳細は出っ歯の症例 11歳男性のページをご覧ください。
上の歯だけ気になっていても、下の歯を動かす理由
例えば、上の前歯が出ている患者さんがいたとします。患者さんとしては、上の前歯を引っ込めたいだけかもしれません。しかし、上の歯をどこまで動かせるかは、下の歯との位置関係によっても決まります。
上の歯だけを動かしても、下の歯との噛み合わせが合わなくなることがあります。反対に、下の歯も動かすことで、上下の歯を適切な位置に並べられる場合があります。
歯は、上と下が別々に働いているわけではありません。上下の歯が噛み合って、初めて一つの機能を果たしています。ですから、上だけが気になっていても、上下両方の矯正が必要になることがあるのです。
前歯だけ気になっていても、奥歯を動かす理由
これも基本的には同じです。例えば、前歯がガタガタしている原因が、歯を並べるスペースの不足だったとします。前歯だけに装置をつけても、並べる場所がなければ、きれいに並びません。そこで、奥歯を動かしてスペースを確保したり、歯列全体の位置を調整したりする必要が出てきます。
また、出っ歯や受け口では、前歯だけではなく、奥歯を含めた上下の歯の位置関係が重要になります。つまり、前歯を治すために、奥歯を動かす必要があるということです。
では、前歯だけの部分矯正はできないの?
もちろん、できる場合もあります。例えば、上下の噛み合わせには大きな問題がなく、前歯が少しだけガタガタしているようなケースです。このような場合には、前歯だけに装置をつける部分矯正で対応できることがあります。治療する範囲が小さくなるため、患者さんにとってもメリットがあります。
しかし、すべての歯並びに部分矯正が適しているわけではありません。特に、出っ歯、受け口、重度の歯の凸凹といったケースでは、前歯だけを動かしても根本的な改善にならないことが多く、基本的には全体矯正が必要になります。部分矯正でできることには限界があるのです。
大切なのは、気になる場所だけでなく、原因を考えること
患者さんが前歯だけを気にされるのは当然です。鏡で見えるのも、人から見られるのも、主に前歯だからです。
しかし、矯正歯科治療では、見えている部分だけではなく、歯並びが悪くなった原因を考える必要があります。
前歯だけを動かせば良いのか。奥歯も動かす必要があるのか。上下両方の歯列を治療する必要があるのか。それは、実際の歯並びや噛み合わせ、顎の骨格を診断して初めて判断できます。部分矯正で十分なら、部分矯正で良い。全体矯正が必要なら、その理由をきちんと説明する。これが大切だと私は考えています。
「前歯だけ治したい」「上の歯だけ矯正したい」という希望があれば、まずはそのままお伝えください。
その希望が実現できるのか、どこまで治療する必要があるのかを、診断したうえでご説明します。
伊賀市の歯医者、峰歯科・矯正歯科クリニックでは、歯並びが気になる方のご相談をお待ちしています。お気軽に矯正相談にお越しください。