歯周病はキスでうつる?歯科医師が本音で解説
執筆:峰 啓介
- 院長ブログ
- 歯周病治療
先日、ちょっと面白いニュースを見ました。歯医者嫌いのご主人が、奥様に「帰ったらキスしてやるから」というLINEを送ったそうです。
ところが、そのご主人はちょうど歯周病の治療中。しかも歯科医院で「70代の歯ぐき」と言われたばかりだったため、奥様から返ってきたのが、「死ねってこと!?」という返信だったそうです。
SNSでも「殺害予告だ(笑)」と話題になったとのこと。もちろん冗談なのですが、夫婦仲の良さが伝わってきて、なんともほっこりする記事でした。
歯周病の人とキスをしても、そんなに心配しなくて大丈夫です

歯周病に関係する細菌は、唾液を介して人から人へ移ることはあります。ただし、細菌が口の中に入ることと、歯周病が進行することは別の話です。
そもそも私たちの口の中には、非常に多くの細菌が存在しています。そして歯周病は特殊な人だけがなる病気ではありません。歯の周りに歯垢がたまり、それを長期間そのままにしていれば、誰にでも歯ぐきの炎症は起こります。
つまり歯周病を考えるうえで非常に重要なのは、日頃の口腔ケアです。キスをしたことで突然歯周病になったり、それだけで歯周病が重篤化したりするようなものではありません。
実際、虫歯の原因となる細菌も、家族間や夫婦間で食器の共有やキスなどを通じて日常的にうつっていると言われています。それでも全員が虫歯や歯周病になるわけではないのは、細菌の量だけでなく、歯磨きの習慣や免疫の状態など、さまざまな要因が関係しているからです。
ですから今回のご夫婦も、そこは安心して仲良くしていただければと思います(笑)。
歯周病は予防できる病気です
逆に言えば、歯周病は日頃から予防することがとても大切な病気です。
歯垢が歯と歯ぐきの境目に残り続けると、歯ぐきに炎症が起こります。その状態が長く続けば、やがて歯を支えている骨にまで影響が及びます。
だから、「歯周病菌をもらわないようにする」ことを気にするより、自分の口の中に歯垢をためないことの方が、はるかに重要です。
毎日の歯磨きと、歯科医院での定期的な口腔ケア。これが歯周病予防の基本です。
歯周病は初期段階では自覚症状がほとんどなく、歯みがきのときに歯ぐきから少し血が出る、朝起きたときにお口がネバつく、といった程度の変化しか感じないことも少なくありません。しかし、これらは歯ぐきの炎症のサインであることが多く、放置すると少しずつ進行してしまいます。気になる症状がある方は、早めに歯科医院でチェックを受けることをおすすめします。
→【関連ブログ】歯ぐきから血が出る・朝だけ口がネバネバ…歯周病のサイン?
また、歯周病は歯ぐきや骨だけの問題にとどまらず、糖尿病や動脈硬化、さらには肝臓の状態など、全身の健康とも関わりがあることが近年の研究で分かってきています。お口の中を清潔に保つことは、歯を守るだけでなく、体全体の健康を守ることにもつながります。
それより私が気になった「70代の歯ぐき」という言葉

この記事を読んでいて、もう一つ歯科医師として気になったことがあります。それが、「70代の歯ぐきですね」と言われたという部分です。
実際のお口の中を診ていないので、どのような意図で伝えたのかは分かりません。ただ、もともと歯医者嫌いだった方に、あえてこのような表現をする必要があったのかな、とは思います。
歯科医院での言葉のかけ方は、患者さんのその後の通院意欲に大きく影響します。特に歯医者が苦手な方にとっては、診療そのものへの恐怖に加えて、「怒られるかもしれない」「否定されるかもしれない」という不安が、足を遠ざける原因になってしまうこともあります。
私なら「これから歯を大切にしましょう」と伝えます
仮に歯周病がかなり進んでいたとしても、歯が残っているのであれば、私は、「今、歯科医院に来られて良かったですね」「残っている歯を、これから大切にしていきましょう」とお話しすると思います。
過去に歯科医院へ行かなかったことを責めても、何も変わりません。大切なのは、これからです。
せっかく歯医者嫌いの方が勇気を出して来院されたのです。そこでさらに怖がらせるよりも、「これからちゃんとケアしていけばいいんだ」と思ってもらう方が、ずっと大切ではないでしょうか。
峰歯科・矯正歯科クリニックでも、歯医者が苦手な方や緊張しやすいお子さんの治療には笑気麻酔を使用するなど、できるだけ不安や恐怖を感じにくい形で治療を受けていただけるよう工夫しています。「怖いから」「痛そうだから」という理由だけで通院をためらっている方にこそ、一度お口の中の状態を知ってもらいたいと思っています。
歯周病が気になる方へ、今日からできること
今回の記事は、夫婦仲の良さが伝わってくる楽しいお話でした。そして歯科医師としては、「歯周病だからキスも危険なの?」と心配する必要はないこともお伝えしておきたいと思います。
歯周病で重要なのは、日頃の口腔ケアです。毎日の歯磨きと定期的な歯科医院でのクリーニングを続けることで、歯周病は予防し、進行を抑えることができます。
今まで歯医者に行っていなかった方も大丈夫です。過去ではなく、これから。今残っている歯を、これから大切にしていきましょう。
伊賀市で歯周病や歯のお悩みがある方は、お気軽に峰歯科・矯正歯科クリニックにご相談ください。