インスタント入れ歯は使える?普通の入れ歯との違いや注意点
執筆:峰 啓介
- 歯に関するお悩み
先日、「インスタント入れ歯」や「簡易付け歯」と呼ばれる商品についての口コミ記事を見かけました。
お湯で温めて自分の歯に合わせて成形する、通販で買える安価な入れ歯のようなものです。
歯科医師として、率直な感想をお話しします。
インスタント入れ歯とは?
インスタント入れ歯とは、通販などで購入でき、自分で形を調整して装着する簡易的な入れ歯です。「簡易付け歯」などの名称で販売されているものもあります。製品によって使用方法は異なりますが、お湯などで素材を柔らかくして、自分の歯や歯茎に合わせて形を整えるタイプなどがあります。
歯科医院で作る入れ歯との大きな違いは、歯科医師がお口の状態を確認して型取りや噛み合わせの調整を行い、一人ひとりに合わせて製作するものではないという点です。手軽に購入できることはメリットに感じるかもしれませんが、「口の中に装着できること」と「自分のお口にきちんと合っていること」は別に考える必要があります。
インスタント入れ歯は本当に合うのでしょうか
人それぞれお口の形は大きく異なります
結論から言うと、十中八九、合わないと思います。
人の口の中の形は、驚くほど千差万別です。
歯の大きさ、歯並び、顎の形、歯茎のラインなど、すべてが一人ひとり異なります。
だからこそ私たちは、型を取り、精密に調整して、初めてフィットする入れ歯を作ります。
お湯で柔らかくして自分の歯に押し当てるだけの既製品で、この個人差に対応できるとは、正直考えにくいです。
装着できても自然とは限りません
仮になんとか装着できたとしても、見た目はかなり不自然になると思われます。
イメージとしては、明石家さんまさんのモノマネをする芸人さんが、口の中に何か入れて出っ歯風の顔をつくる、あの感じに近くなるのではないでしょうか。
自然な口元とはほど遠い状態になる可能性が高いです。
インスタント入れ歯と歯科医院の入れ歯は何が違う?
インスタント入れ歯と歯科医院で製作する入れ歯の大きな違いは、単に「オーダーメイドか既製品か」ということだけではありません。歯科医院で入れ歯を作る際には、歯や歯茎の状態を確認したうえで型取りを行い、噛み合わせや残っている歯とのバランスなども確認しながら、一人ひとりのお口に合わせて製作します。
さらに、入れ歯は完成したら終わりではありません。実際に装着していただき、痛みが出る部分や噛みにくい部分があれば、必要に応じて細かな調整を行います。
一方、インスタント入れ歯は既製品を自分で調整して使用するため、歯茎への当たり方や噛み合わせ、周囲の歯とのバランスまで細かく合わせることは難しいと考えられます。入れ歯は見た目を補うだけのものではなく、食事や会話など毎日の生活にも関わるものです。そのため、「装着できたから大丈夫」ではなく、お口全体との適合を考えることが大切です。
峰歯科ではお口の状態に合わせて入れ歯を製作しています
三重県伊賀市の峰歯科・矯正歯科クリニックでは、患者さん一人ひとりのお口の状態を確認し、段階を踏んで入れ歯を製作しています。
当院の入れ歯製作では、まずお口の診査と型取りを行い、その後、精密な型取りや噛み合わせの確認、歯を並べた状態での試適などを経て完成となります。歯や歯茎の形だけでなく、噛み合わせや装着時の状態まで確認しながら製作することが、既製品のインスタント入れ歯との大きな違いです。
また、完成後も痛みや噛みにくさがある場合には、必要に応じて調整を行います。
→【よくある質問】『入れ歯はどのくらいの期間使えますか?』など掲載
インスタント入れ歯で食事はできる?
インスタント入れ歯を検討している方の中には、「装着したまま食事ができるの?」と気になる方もいると思います。
ここで大切なのは、「口の中に装着できること」と「しっかり噛めること」は同じではないということです。
食事をするときには、入れ歯にさまざまな方向から力がかかります。歯茎への適合や噛み合わせが合っていなければ、噛んだときに動いたり、歯茎に強く当たって痛みが出たりする可能性があります。歯科医院で入れ歯を作る際に噛み合わせや装着後の調整を行うのは、見た目だけではなく、食事など日常生活で使用することまで考えているためです。
インスタント入れ歯については、製品によって使用方法や注意事項も異なるため、必ず製品の説明を確認し、歯科医院で作る入れ歯と同じように使用できるものとは考えない方がよいでしょう。
合わないインスタント入れ歯を使い続けるリスク
「多少合わなくても、見た目が補えればいい」と考える方もいるかもしれません。しかし、お口に合っていないものを長時間使用することには注意が必要です。
サイズや形が合っていないものを装着すると、歯茎の一部分に強く当たり、痛みや傷につながる可能性があります。また、噛み合わせが合っていなければ、食事がしにくかったり、残っている歯などに余計な負担がかかったりすることも考えられます。
さらに、使用中に外れたり動いたりするような状態であれば、製品によっては誤って飲み込んでしまうことにも注意が必要です。特に、痛みがある、すぐに外れる、噛みにくい、歯茎に傷ができるといった状態で無理に使用を続けることはおすすめできません。
インスタント入れ歯を長期的な入れ歯の代わりとして自己判断で使い続けるのではなく、歯を失った場合は一度歯科医院でお口の状態を確認してもらいましょう。
入れ歯は歯科医院で作ることをおすすめします
保険適用の入れ歯は極端に高額ではありません

「歯医者は高そうだから」という理由でインスタント入れ歯を選ぶ方もいるかもしれません。
しかし、保険適用の入れ歯であれば、そこまで高額にはなりません。
インスタント入れ歯を自分の口に合わせようと何度もお湯につけ直し、フィッティングに苦労する時間と労力をかけるくらいなら、その分歯科医院に通っていただいた方が、結果的に確実で満足のいくものが手に入ります。
峰歯科では保険診療・自費診療の入れ歯に対応しています
当院では、保険診療の入れ歯に加えて、自費診療の入れ歯にも対応しています。
自費診療の場合は使用できる材料の選択肢が広がるため、入れ歯をコンパクトにしたり、金属部分が目立ちにくい設計を検討したりすることも可能です。
当院の自費の入れ歯は、材質や症例によって異なりますが、費用の目安は10万円〜30万円程度、型取りから完成までの期間は約1か月とご案内しています。ただし、インスタント入れ歯と比較する際は、費用だけでなく、噛み合わせや装着後の調整まで含めて検討することをおすすめします。
お口に合った入れ歯をご提案します
入れ歯は、毎日の食事や会話を快適に行うために欠かせないものです。
一人ひとりのお口に合わせて製作・調整することで、違和感をできる限り少なくし、見た目や使い心地にも配慮した入れ歯をお作りできます。
保険診療の入れ歯であっても、既製品をそのまま使用するわけではありません。お口の状態を確認し、型取りや噛み合わせの確認を行いながら、一人ひとりのお口に合わせて製作します。