虫歯の治療費はいくら?進行度別の治療と保険適用を解説
執筆:峰 啓介
- 虫歯治療
先日、こんな記事が目に留まりました。
手取り22万円から毎月10万円を投資に回し続けた29歳男性が、虫歯の治療費をきっかけに崩壊していったという話です。
治療費をケチって放置した虫歯が悪化し、「インプラントで10万円以上かかる」と告げられ、しぶしぶ証券口座を取り崩したというのです。読んでいて、歯科医師としてどうしても言いたいことがありました。
「虫歯の治療には10万円もかかるの?」と不安に思う方もいるかもしれませんが、一般的な虫歯治療で、いきなり10万円以上の費用が必要になるわけではありません。日本では、多くの虫歯治療に健康保険が適用されます。ただし、虫歯の進行度や必要な治療、使用する材料、保険診療・自費診療のどちらを選ぶかによって治療費は変わります。
では、虫歯がどこまで進行すると、どのような治療が必要になるのでしょうか。虫歯の進行度と治療内容から見ていきましょう。
虫歯の治療費は進行度によって変わります
虫歯の治療費は、「虫歯1本ならいくら」と一律に決まっているわけではありません。虫歯がどこまで進行しているかによって必要な治療が異なるため、治療費にも差が出ます。虫歯は一般的に、進行度によってC0~C4に分類されます。
C0:ごく初期の虫歯
歯の表面が白く濁るなどの変化がみられる、ごく初期の段階です。まだ歯に穴が開いていない状態であれば、すぐに歯を削るのではなく、フッ素の活用や毎日の歯磨き、定期的な経過観察などで進行を防げる場合があります。この段階で虫歯に気づくことができれば、歯を削る治療を避けられる可能性があります。
C1:エナメル質まで進んだ虫歯
歯の表面を覆っているエナメル質に虫歯ができた段階です。まだ痛みやしみる症状がほとんどないこともあります。虫歯の範囲が小さければ、悪くなった部分を取り除き、歯科用の樹脂(コンポジットレジン)などを詰めて治療できる場合があります。
C2:象牙質まで進んだ虫歯
虫歯がエナメル質の内側にある象牙質まで進行した状態です。冷たいものや甘いものがしみるなど、症状を感じる方も増えてきます。虫歯の大きさや場所によって、コンポジットレジンによる治療や詰め物などが必要になります。C1よりも削る範囲が大きくなり、治療内容によって費用や通院回数も変わります。
C3:歯の神経まで進んだ虫歯
虫歯が歯の内部にある神経まで達した状態です。何もしなくてもズキズキ痛む、温かいものがしみるなど、強い症状が出ることがあります。歯の神経まで感染が及んでいる場合には、根管治療(歯の根の治療)が必要になることがあります。その後、歯の状態に応じて土台を作り、被せ物などで歯を修復します。
治療工程が増えるため、初期の虫歯と比べて通院回数や治療費も増えやすくなります。
C4:歯を残すことが難しくなった虫歯
虫歯がさらに進行し、歯の大部分が失われた状態です。歯の状態によっては、残念ながら抜歯が必要になる場合があります。
抜歯後に歯を補う場合には、入れ歯・ブリッジ・インプラントなどの選択肢があります。それぞれ治療方法や保険適用の有無が異なるため、必要な費用も大きく変わります。ただし、歯を失ったからといって、必ずインプラントにしなければならないわけではありません。
虫歯は早めに治療するほど負担を抑えやすくなります
虫歯は進行するほど、治療する範囲が大きくなる傾向があります。
初期の虫歯であれば、経過観察や比較的小さな処置で済む可能性があります。一方、虫歯が神経まで達すると根管治療が必要になったり、その後に被せ物を作ったりと、治療工程が増えていきます。
さらに歯を残すことが難しくなれば、抜歯だけでなく、その後に入れ歯・ブリッジ・インプラントなどを検討することもあります。つまり、虫歯を早めに発見・治療することは、歯をできるだけ残すという意味だけでなく、治療回数や治療費の負担を抑えることにもつながります。
「痛くなってから歯医者へ行こう」と考える方もいるかもしれませんが、初期の虫歯は痛みがないことも少なくありません。治療を大がかりにしないためにも、気になる症状がある場合は早めに確認することが大切です。
インプラントは選択肢の一つに過ぎない
まず、大切なことをお伝えします。
インプラントは、歯を失ったときの治療法の一つです。必須ではありません。
歯を失った場合の選択肢は、大きく三つあります。
インプラントは人工の歯根を骨に埋め込む方法です。
ブリッジは両隣の歯を削って橋渡しにする方法、入れ歯は取り外し式の義歯です。
インプラントは審美性や機能性に優れていますが、保険が適用されないため費用が高くなります。
一方、ブリッジや入れ歯は保険適用で治療できます。
記事の男性が「インプラントで10万円以上」と告げられたとのことですが、インプラントは通常1本あたり30〜50万円程度かかるのが一般的です。
10万円というのはむしろ安すぎて、内容が気になるくらいです。
日本には保険制度がある
日本には、国民皆保険という世界に誇れる制度があります。
虫歯の治療は、基本的に保険診療でカバーできます。
詰め物、被せ物、神経の治療など、多くの治療は保険内で対応できます。
虫歯の大きさや治療する歯の場所などによって治療方法は異なりますが、虫歯を削って詰める治療や根管治療、被せ物、抜歯など、多くの治療には保険診療という選択肢があります。
一方で、詰め物・被せ物の見た目や素材、治療方法などにこだわる場合には、自費診療を選択することもできます。
大切なのは「自費診療にしなければ治療できない」と考えるのではなく、保険診療と自費診療それぞれの特徴や費用について説明を受けたうえで、ご自身に合った治療方法を選ぶことだと考えています。歯を失った場合でも、保険適用のブリッジや入れ歯という選択肢があります。
「虫歯を放置したら10万円かかると言われた」という状況は、保険制度が整った日本ではほとんど考えにくいことです。もちろん、虫歯を長期間放置すれば治療の難易度は上がります。早めに来ていただくに越したことはありません。しかしだからといって、治療費を心配して歯科受診をためらう必要はありません。
峰歯科の考え方「入れなくていい」という選択肢もある

三重県伊賀市にある歯医者、峰歯科・矯正歯科クリニックでは、歯が欠けたり抜けたりした場合に、必ず何かを入れるとは考えていません。
基本的な考え方はこうです。
「歯がなくなって困るから、何か入れたい」そう思うなら、三つの選択肢を提示します。
インプラント・ブリッジ・入れ歯の三択は、あくまで本人が「入れたい」と思ったときの話です。
「特に困っていない」なら、入れなくても構いません。欠損があっても日常生活に支障がなければ、無理に治療を勧めることはしません。ただし、歯を失った場所や噛み合わせによっては、周囲の歯が動いたり、噛み合わせに影響したりすることもあります。そのため、治療をしない場合も含め、お口全体の状態を確認したうえで一緒に考えていきます。
何が「困る」かは人によって違います。
食べにくい、見た目が気になる、隣の歯が動いてきそうで不安…そういった悩みが出てきたときに、一緒に考えればいい。治療の主導権は、いつも患者さんにあると思っています。
治療費を理由に歯科医院を遠ざけないために
虫歯の治療費は、虫歯の進行度や必要な治療によって異なります。初期の段階であれば比較的小さな治療で済むことがありますが、虫歯が神経まで進んだり、歯を残すことが難しくなったりすると、治療回数や費用も増えやすくなります。
ただし、日本では多くの虫歯治療に健康保険が適用されます。また、歯を失った場合でもインプラントだけが選択肢ではなく、保険適用のブリッジや入れ歯などを検討することもできます。
「治療費が高そうだから」と虫歯をそのままにしてしまうと、結果として治療が大がかりになる可能性があります。費用について不安がある場合も、まずは現在のお口の状態を確認し、どのような治療方法があるのか相談してみてください。